さて。
まずは『東海道名所図会』から。
新訂 東海道名所図会〈中〉尾張・三河・遠江・駿河編 (新訂 日本名所図会集)
- 作者: 秋里籬島,粕谷宏紀
- 出版社/メーカー: ぺりかん社
- 発売日: 2001/07
- メディア: 単行本
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310ページです。
「浅間社
賤機山の麓にあり。当府内生土神となす。例祭四月初申日、十一月同日。
(略)
祭神 木花開耶姫命 左瓊々杵尊 右万機姫命。
惣社 社内にあり。祭神大己貴命。
奈吾屋祠 本社の側にあり。祭神大山祇命。
(略)
貝原益軒『吾嬬路記』にいわく、当社は富士浅間の新宮なり。延喜年中、富士の本宮をここに勧請す。本社二所北にありて卯に向かう。摂社南に立ちて巳に向う。山の宮石壇百四級あり。同所南の山に穴あり。そこしらずという。
当社の宮づくり、美麗なる大社なり。日本にて神社の美麗なること、日光を第一とし、浅間を第二とすという。社宮は新宮左近、惣社宮内とて両人ありと書けり。」
うむ……『東海道名所図会』は、『尾張名所図会』と違って結構淡白なのが玉に瑕……延喜年間に勧請されて、「日光東照宮」に比肩する社殿だと語られており、なおかつ駿府ですから、幕府に目をつけられるようなことは書けないわけで……「浅間神社」のことを妄想しようと思えば富士に行くほかないのです。
「山の宮石壇百四級あり。同所南の山に穴あり。そこしらずという。」
「麓山神社」までの様子や、おそらく古墳のことなのかと思いますが、江戸後期、今とそれほど変わらない感じもあります。
ところで、「奈吾屋祠」って、なんでそう呼ばれていたんでしょう……結構古くからの呼称なのかな……。
不勉強すぎるので、あまり突っ込まず行きたいと思います。
で、式内社比定ということですので、
◯こちら===>>>
『神社覈録』から。
448コマです(引用にあたって旧字をあらためた箇所あり/判読不能文字は■に置き替える)。
「神部神社
(略)◯祭神 大己貴命、相殿栲幡千々姫命、瓊々杵尊(志)、又云天照太神(風土記)、◯府中志都機山麓惣社相殿に在す、(略)◯惣国風土記五十五残缼云薦河安弁郡神部神社、則日本武尊、所祭太神宮也、(以下虫食)、駿河國志云、賤機山惣社本社、相殿の神二座、類聚国史に、止豆鰭大己貴神社、又延喜式に当国安倍郡神部神社と申奉るは、則総社の御事也、本社は大己貴の大神にてまします、又国史に、惣社は栲幡千々姫命と瓊々杵尊両神を祭り奉るとありて、紛らはしきやうなれども、今本社は大己貴命にて、瓊々杵尊と栲幡千々姫は相殿にまします、神部神社は別社、七社の中に天照太神まします、日本武尊此国に下り玉ひし時遥拝の霊跡にて、伊勢太神を祭り玉ふとて(以下略)」
おっと、順番的に「神部神社」になってしまいました。
続いては、
「大歳御祖神社
(略)◯祭神玉依媛(風土記)、◯府中志津機山麓浅間宮傍に在す、今奈吾屋本社と称す(駿河志◼︎考)、(略)◯惣国風土記五十五残缼云、薦河安辨郡大歳御祖神社、(◼︎◼︎神)誉田天皇四年癸巳始祭之、大歳御祖神者号玉依姫、賀茂健角見命之女也、雷神者伊弉冊尊生火神訶遇突智終焼、伊弉諾尊斬為三段、故其一為雷神云(以下略)」
ふむふむ。
あ、「浅間神社」は式内社ではないのです……駿河で式内社で「浅間神社」ったらもう富士の本宮のほうですので……。
◯こちら===>>>
↑『特選神名牒』も見ておきましょうか。
184コマです。
「神部神社
祭神大己貴命
今按社伝祭神大己貴命相殿彦々火瓊々杵尊栲幡千々姫命とあれと萬幡姫は志豆機山の名より云出で此姫神の御名によりて瓊々杵尊をも祭れるにて実は大己貴命主神なるべし故今一座を記せり
(略)
今按一説に当社の神明社なりとも又廬原郡河合村なる神明社なりとも云ど詳かならず今は注進状に従へり」
「大歳御祖神社 (称 奈吾屋本社)
祭神大歳御祖神
今按皇太神宮儀式帳に湯田社一處称鳴震雷又大歳御祖命とある同神とみえたりされば此社を奈吾屋本社と云也安倍郡奈吾屋火雷地祇とあるも由ありげなり
(略)
今按一説に静岡の市中なる雷宮を近世大歳御祖皇神社といへど彼社は神階帳に従五位上安倍郡奈吾屋火雷地祇と見えて古へ当社を移し祭れりしにて中世までは即別宮摂社の如くなりしかば式に載られし社は当社なる事云も更なりかの雷宮は有度郡にて郡も違へればかたがた由なし」
……なんだ、「鳴震雷」って……。
◯こちら===>>>
『群書類従』に、『皇太神宮儀式帳』がありますので、そちらから。
17コマです。
「湯田[神]社。一處(湯田村在)。称鳴宸電。又太歳御祖命。形無。同御宇(※ブログ筆者注:「大長谷天皇」、「雄略天皇」の御宇と思われます)定祝」
……ううむ、「鳴宸電」、「鳴震雷」、言いたいことは「なるみかずち」ということなのでしょうから、雷神でしょうか……。
「大歳神(大年神)」の「御祖」だから「大年御祖命」だとすると、「神大市比売命」という、「須佐之男神」の妻神の一柱、のことを指しており、「市(場)の守護神」だったり、「大歳神(大年神)」や「宇迦之御魂神」という穀物関係の母神であるので、五穀豊穣の神だったりするようです。
じゃあ雷神じゃないのか、というとそうではなく、ほら、「稲妻」だし、「稲荷」なので、その母神もまた雷神≒蛇神の属性があるものと思われます。
「湯田神社」、と「田」が入っているくらいなので、どうも「神宮」の「斎田」が地名の語源ではないか、ということは「田」の守護神が必要で、「市」の守護神なのかなぁ……駿河の「大歳御祖神社」もやはり、そうした役割だったのか……ううむ……。
で、なんで「奈吾屋」なんでしょう……それがまったく想像できません(いえ、多分何かしら、地名なんだと思います……さすがに名古屋は関係ないですよ、徳川お膝元だからっていってねぇ……)。
『神社覈録』のほうは、「大山咋神」の妻の「玉依姫」を「大歳御祖神」としていて、「大山祇神」と「大山咋神」の混乱が見られる感じですね……「大山咋神」は雷神属性ありますが、その妻神にはないような……。
「神部神社」のほうは、「賎機山」という地名が先にあって、そこに「万幡豊秋津師比売命(栲幡千々姫命)」を引っ張ってきた、というのが正解のように思えます(あまり単体でお祀りされることはないので)。
何かしら、機織りと関係しているのかもしれませんが……そういえば、式内社で「倭文神社」が富士郡にありますな……さて……。
あ、そうだ、
◯こちら===>>>
「飛騨一宮水無神社」(岐阜県高山市) - べにーのGinger Booker Club
「飛騨一宮水無神社」(補) - べにーのGinger Booker Club
↑「飛騨一宮水無神社」の記事ですが、「左甚五郎作の木彫りの馬」の伝説が残っています(実際の作者は異なるようですが)。
「水無神社」の御祭神は「御年神」、「大歳神(大年神)」の御子神です。
……さあ、何か関係があるんじゃないかと思ったあなたは、陰謀論とかに気をつけたほうがいいです(私もです)。
雑な記事になってしまいましたが、あとは郷土史家のみなさんにおまかせします。
おまけ。
「千勝浅間神社」、夕暮れの様子。
イベント目的地の近くだったので、寄りました。
村の鎮守の、という感じが残っていて、こういうところのほうが萌えますね(?)。
一日限りの静岡巡り終了〜。
次はいついけるかなぁ……。