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神社仏閣ラブ(弛め)

「佐久奈度神社」(補)

さて。

 

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鈴鹿連胤 撰 ほか『神社覈録』下編 ,皇典研究所,1902. 国立国会図書館デジタルコレクション

神社覈録 下編 - 国立国会図書館デジタルコレクション

(参照 2023-12-07)

 

式内社なので、『神社覈録』から(引用にあたって旧字をあらためた箇所あり/判読不能文字は■に置き替える)。

p160です。

「佐久奈度神社 名神大

佐久奈度は假字也◯祭神瀬織津姫命◯大石荘東村に在す、今は櫻谷社と称す(頭注に、一名佐久良谷明神と云り)◯式三、(臨時祭)名神祭二百八十五座、(中略)近江国佐久奈度神社一座、大祓詞に、高山之末、短山之末與利、佐久那太理爾落瀧津、速川乃瀬爾坐瀬織津姫止云神、云々と云る、則ち是なり、謹て崇敬すべし、

(略)

文徳実録、仁寿元年六月甲寅、詔以近江国散久難度神列於明神、三代実録、貞観元年正月廿七日甲申、奉授近江国従五位下佐久奈度神従五位上、」

 

今は、「祓戸四神」が御祭神となっていますが、『神社覈録』においては「瀬織津姫命」だけだった、と。

まあ、祓戸神と言ったら「瀬織津姫命」、という認識ですから(他の三神は、ちょっとマイナー……)。

 

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六月晦大祓祝詞 - Wikisource

 

↑『延喜式』の「六月晦大祓祝詞」には「祓戸四神」がばっちり出てくるのですが、最初に「瀬織津姫命」が出てくるからでしょうか。

 

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教部省 編『特選神名牒』,磯部甲陽堂,1925. 国立国会図書館デジタルコレクション

特選神名牒 - 国立国会図書館デジタルコレクション

(参照 2023-12-07)

 

『特選神名牒』に書かれていることも、まあ、同じです。

p384ですので、ご参照を。

 

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寒川辰清 著 ほか『近江輿地志略 : 校定頭註』,西濃印刷出版部,大正4. 国立国会図書館デジタルコレクション

近江輿地志略 : 校定頭註 - 国立国会図書館デジタルコレクション

(参照 2023-12-07)

 

『近江輿地志略』も見てみましょうか。

p570です。

 

「【櫻谷】佐久奈度社の邊をいふ。此地即佐久奈谷なり大七瀬の一なる事は【公事根源】に見ゆ。」

 

ううむ、桜が先か……果たして……。

 

「【佐久奈度社】東村にあり。祭神一座瀬織津姫命也。土人誤り云ふ櫻檀社又は櫻奈止大明神社と、皆倶に孟浪の言笑ふべし。櫻谷社といふは地名によりて也。(中略)臣按ずるに瀬織津姫天照大神の荒魂也。内宮別宮荒祭宮也。【二所大神宮御鎮座伝記】曰、日向小戸橋檍原而祓除之時洗左眼因以生日天子大日孁貴也、天下化生曰天照大神荒魂荒祭神也。謂祓戸神、瀬織津姫是也云々。【阿波良波命伝】曰、荒祭宮一座伊弉諾尊洗左眼因以生號曰天照荒魂亦名瀬織津比咩神也云々。臣按ずるに当社を佐久奈止社と号し奉る事は、【中臣祓】に曰く、高山之末短山之末與利佐久那太理仁落瀧津速川乃瀬仁坐須瀬織津姫止云神云々。佐久那太理とは析谷と云ふ事也、谷は山の析なり。伊勢国度会郡継橋郷豊宮崎に井谷といふ地あり、此井谷を【類聚神祇本源】には井足と書せり。古昔谷を足といふ、足は太理也。然らば佐久奈止は析谷といふ事也。那は助語にて佐久奈太理の理を下略し太と止とはタチツテトとて五音の相通なれば佐久那止とは号し奉るなるべし(中略)土俗相伝、古は伊勢参宮する者必先此宮に詣づといふ。」

 

この続きに、「鹿飛」の説明があります(川が狭くなっていて、鹿でも跳んで渡れるところ、という由来らしいです)。

『近江輿地志略』としては、「さくのたり」から「さくなたり」になり、「さくなと」になった、と考えているようです。

「谷は山の析」……ってことは「析谷」って「谷谷」ってことになるんじゃないでしょうか……うーん、なんとも……。

伊勢神宮」には「荒祭宮」というのは確かにありまして、「天照大神」の荒魂で、それを「瀬織津姫命」を同一とする思想があるようです。

天照大神」が「伊弉諾尊」の禊によって生まれた、という神話はありますが、それが荒魂だというのはどうなのか……禊によって荒魂が分離し、川に流れたという意味でしょうか。

「祓戸四神」は、記紀神話には登場せず、「大祓詞」に登場する謎の神、と言われております。

川の流れを利用して清めを行なう、というのは昔から自然にあったと思われますが、それを儀式化してから、改めて神格を付与する、という順番ではないかと思います。

川の神と考えるには、「祓戸四神」は、人工的ではないでしょうか。

比較的新しい神格だからこそ、記紀神話としては残っていない、ような気がします(?)。

「さくなと」は、「せと」と同じような意味合いではないでしょうか。

川の流れが狭くなっているところ、くらいの意味ではないかと思います。

ただ、この言葉があまり広まっていないことからすると、固有の地名が語源となっている可能性も高いかな、と(「桜」なら、「さくら」を残すと思うのですよね、やっぱり……)。

 

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七瀬の祓え(ななせのはらえ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

 

コトバンクに載っている『日本国語大辞典』によれば、

 

「中古、朝廷で毎月または臨時に行なわれた行事。吉日を選んで、天皇のさまざまなわざわいを負わせた人形(ひとがた)を、七人の勅使に命じて、七か所の河海の岸に持たせて祓えをした。難波・農太・河俣・大島・橘小島・佐久那谷・辛崎でするのを大七瀬(おおななせ)または七瀬といい、耳敏(みみと)川・川合・東滝・松崎・石影・西滝・大井川で行なうのを霊所七瀬、河合(糺川)・一条通・土御門通・近衛通・中御門通・大炊御門通・二条末通でするのを加茂七瀬という。当時の公卿たちも朝廷にならって行ない、鎌倉幕府もこれに準じて行なった。鎌倉のは由比浜・金洗沢・固瀬川・六連・㹨河・杜戸・江島がその場所であった。七瀬のみそぎ。《季・夏》」

 

ということらしいです。

「佐久那谷」という表記なので、「さくなたに」、やっぱり「谷谷」ってことになるような気がします……語源は掘っても掘っても辿りつきません……。

 

ともかく、いい神社に出会えたことに感謝です。

もうちょっと、妄想したような気がするのですが……思い出したらまた書きます〜。