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「春日大社」をやや満喫しきれず、「若宮15社めぐり」で力尽きた感はありますが、ともかく参拝を終えまして。
スマートフォンで地図を見ていたら、「二の鳥居」あたりから細い道が南の方に抜けていたので通ってみました。
後で調べると「ささやきの小径」と言うらしく(囁きでしょうか、笹焼きでしょうか……囁きでしょうね)。
出口あたりには「志賀直哉旧居」があります。
あ、これは紅葉が撮りたかっただけです。
そこから西に行きますと、地図上では「赤穂神社」の名前が。
○こちら===>>>
……結構無理やりな感じがしますね。
ごくごく小さな敷地に、簡素にお祀りされています。
「式内赤穂神社 御祭神
天児屋根命 一座
天満宮 一座
弁財天社 相殿」
「式内 赤穂神社の由来
古来、高畑町の春日社神官邸町の西端の地に鎮座して久しく里人の尊崇を受け給ふ。
平安時代「延喜式」所載の古社にしてかの二月堂お水取りに読み上ぐる神名帳にも赤穂明神とあり、連綿今日に至るまで読誦せらるる古例なり。
上古天武天皇紀六年に十市皇女を同十年に氷上ノ夫人を「赤穂ニ葬ル」とあるは蓋しこの地辺りならむ。もとは社地広大にして数百余坪 桜樹多く 幕末頃まで 桜田の地名ありき。近世の記録には天児屋根命を祀るとせるも加ふるに、「高貴の姫君を葬る」との口碑伝承あるはいと久しく女人守護の霊験久しかりし証なり。
明治御一新の後 この里荒廃し二百戸近き社家・禰宜の大半は離散して築地塀のみ虚しく残り秋艸道人、堀辰雄らの文人哀惜の詩文あり。されどより深く嘆きまさりし里人有志滅びゆく天満宮社・弁財天を合祀して赤穂社の左に配し今に二社併存す。昭和五年以来 この地の産土神鏡神社の別社となり、地元有志再興の至誠を注ぎつつ今日に至る。神徳の長久を仰ぎ先人の篤信を継承して復興の機運を待望する所以なり。
昭和五十二年九月十八日 例祭の佳日
赤穂神社 地元奉賛有志
鏡神社・赤穂神社 宮司 梅木春和」
……近くには「春日大社」という大神社があったのに、どうして「二百戸近き社家・禰宜の大半は離散して」なんてことになってしまったんでしょう。
明治政府は皇室を過剰に神格化することで近代日本の中心に据えたのですが(昔からそれに近かったですし、今もそれは続いています)、その過程で排斥される対象として「蘇我氏」に狙いがつけられたことは想像に難くありません。
「蘇我馬子」は「崇峻天皇」を暗殺させていますし、「蘇我蝦夷」「蘇我入鹿」親子は、まるで王のごとき振る舞いをしたとして、のちの「天智天皇」と「中臣鎌子」に殺されています(乙巳の変)。
尊皇を旨とする新政府としては、悪として祭り上げやすい存在だったといえるでしょう。
「藤原氏」はといえば、平安時代に、ときの天皇と姻戚関係を結びながら、朝堂での影響力を増してはいきましたが、「蘇我氏」に比べると、「悪の度合い」がやや薄いのかもしれません。
そんな「藤原氏」の氏神「春日大社」の間近にありながら、荒廃した理由がなんなのか。
「復興の機運を待望する」と書かれてから30年以上が過ぎても、往時のように復興はできず……何かの力が働いたのでしょうか。
拝殿(?)の中に、「春日神官住居大略地図」というのがありました。
まさに神官町、といった感じだったようです。
さて。
○こちら===>>>
国立国会図書館デジタルコレクション - 大日本名所図会. 第1輯 第3編
↑『大和名所図会』に「赤穂神社」の記事があります(引用にあたって旧字をあらためた箇所あり/判読不能文字は■に置き替える)。
92コマ。
「赤穂神社
下高畠町南側にあり。神燈台石に「春日若宮神之坊社」とあり。」
……以上です。
ちょっとさみしいので、
○こちら===>>>
↑こちらの167コマから。
「赤穂神社
赤穂は阿加保と訓べし ○祭神詳ならず ○南都高畠神坊町に在す(大和志)
諸社根元記云、春日末社赤穂明神」考證云、祭神倉稲魂命、」比保古云、赤火姫大神、○日本紀、天武天皇七年四月丁亥朔庚子、葬十市皇女於赤穂」
……御祭神はよくわかりませんが、「春日大社」の末社だと考えられていたりしたようです。
『延喜式』の式内社は、現在となっては所在も不明な神社の名前が残っています。
営々と続く大神社もあれば、もはや記録にしか残らない神社もある、ということが、不思議といいますか、世の常といいますか。
何がそれらを分かったのか。
権力か、崇敬か。
そういったものだけでは説明できない何か、なのか。
ともかく、小さなお社でしたが、奈良の街中にはとても馴染んだ景色でした。
「秋艸道人、堀辰雄」という文人は、私はほとんど存じ上げませんが、堀辰雄といえば宮崎駿監督の『風立ちぬ』で瞬間風速的に話題になったような気がします。
映画を機に、堀辰雄の小説『風立ちぬ』や『菜穂子』が読まれたりしたのでしょうか。
私は読んでいませんし、映画も見ていません。
「赤穂神社」に立ち寄ったので、なぜか読んでみよう、という気になりました。
不思議なものです(読むかどうかはわかりません)。
御朱印はありません。
「鏡神社」に行けば、いただけたのかもしれません……下調べが大切です。