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伊勢妄想

 

QED 伊勢の曙光 (講談社ノベルス)

QED 伊勢の曙光 (講談社ノベルス)

 

 真実か否かはともかく、歴史の空隙を一種の謎と見なして妄想するにおいて、高田崇史先生の『QED』シリーズは非常に面白いです。

そこで、シリーズ最終巻である『QED 伊勢の曙光』を参考に、いろいろ妄想してみようかと思います。

 

作中では、主人公が「伊勢に関する謎」として掲示するものが、30あります。

全部書いてみます(※通し番号、<※>部分は本ブログ筆者)。

 

(1)何故、内宮より後に立てられた外宮から先にお参りするのか。

<※外宮の神官等が提出した通称『止由気宮儀式帳』によると、豊受大神は、雄略天皇の時代(内宮の定まったとされる垂仁天皇から10代後)に丹波国から迎えられたとしている。『日本書紀』にはその記事がないので、後世に作られた由来か。『古事記天孫降臨の場面に、「登由宇氣神、こは外宮(とつみや)の度相に坐す神ぞ」とある。しかし、『古事記』には内宮という呼び名がないので、これもやはり後世の挿入ではないかと考えられる。なお、『古事記天孫降臨の場面で書かれる神々は、天の石屋戸の場面に登場した神々だが、「登由宇氣神」と「天石門別神(あめのいはとわけのかみ/門、戸、窓の神)」はその場面には登場していない。>

 

(2)何故、祭祀も外宮の方が先—外宮先祭なのか。

<※式年遷宮は、かつては内宮→外宮の順番で行なわれていたとされる。内宮優位の一つの証拠と考えられる。神嘗祭において、「由気大御饌(ゆけのおおみけ)」と呼ばれる祭事(神に捧げる中でも、特別な食事)が、外宮→内宮の順番で行なわれた。豊受大神の役割は、天照大神に食事を提供することにある(とされている)ので、自ら活力を蓄えるために「由気大御饌」をまず受け、それから天照大神に捧げた。外宮先祭は、この慣習がいつの間にか拡大解釈されていったからではないかとも言われる。平安以降、内宮と外宮が対立していたことも関係があるだろう。>

 

(3)何故、外宮の様式は『男千木(おちぎ)』で、鰹木も奇数本なのか。これは男神を祀っていることになるが、祭神豊受大神—明らかに女神である。

<※「千木」は、社の屋根の端にあるもので、「×」の字を描いている。「×」の下三角の部分が屋根の勾配で、上に突き出た部分が「千木」。古代には、「×」の交差部分を縄で固定したと考えられており、そもそも構造上の必要パーツだった。それが装飾となっていく。「千木」の端は削がれており、外削(そとそぎ/垂直な切り口)は男神を、内削(うちそぎ/水平な切り口)は女神を表している、という慣習がある。また、「鰹木」は、社の屋根に並べられている、丸太木で、中心がやや膨らんでいることが鰹節に似ていることからこう呼ばれたそう。これも元々は、棟木を縄で結んで、茅葺き屋根を抑える働きがあったらしいが、後世装飾となった。陽数である奇数の「鰹木」があるものは男神を、陰数である偶数の「鰹木」があるものは女神を表している、と考えられている。神宮の(唯一)神明造では、どちらも見られる。なお、屋根の上に置かれるものとして、「鴟尾(しび)」や「鯱」があるが、これらは、「水」気のもので、もって「火」氣を剋する即ち防火の呪いであったと考えられている。これらと「鰹木」との関係は不明。>

 

(4)何故、五十鈴川を渡ってから下るのか。

<神宮の境内図を見ると、内宮(http://www.isejingu.or.jp/naimap.pdf)では、まず宇治橋五十鈴川を渡る。その後は地図では分からないが、正宮に向かって少しずつ下っている。外宮(http://www.isejingu.or.jp/gemap.pdf)も、火除橋を渡るが、こちらの参道が下っていたかどうかは筆者は覚えていない。「川を渡る」「参道が下っている」のは、高田崇史式「祭神が怨霊かどうか」の見分け方の基本。>

 

(5)何故、外宮・内宮共に、参道が九十度折れているのか。天皇家の祖先が怨霊だというのか。

<※これも、地図を見ると、最初の鳥居から、内宮・外宮ともにどちらも曲っていることがわかる。「参道が直角に折れ曲がる」のも、怨霊の見分け方の一つ。古来、神域とされる場所は、「岩」「木」「湧き水」と関わりが深い場所が多いため、必然として神社にはこれらの要素がつきまとう。また、「川」は、国境線のない時代においては明確な「境界」であり、内と外とを区切る目印。川を渡ることは、神社には多いが、寺にはあまりない(周囲を水路や堀で囲んでいる寺も、もちろんあるが)。ここで問題となるのは、神域との「境界」として「川」が選択されているのであれば、そこに行けるのは神職だけのはずであり、参拝者が「川」を渡ることが許されていることへの疑問ではないか、と思われる。>

 

(6)何故、天皇は明治の御代まで公式参拝されなかったのか。

<※最初に公式に参拝したのは明治天皇。『日本書紀』には、持統天皇が伊勢巡幸した記事があり、そこでは神宮参拝は書かれていないが、伊勢まで出向いて参拝しないというのは不自然なので、恐らく参拝したものと思われる。なお、神宮の遷宮は、持統天皇が最初に行なったとされている。>

 

(7)何故、明治になって突然公式参拝されたのか。

 

(8)何故、鳥居に注連縄がないのか。

<※鳥居の起源は明らかではなく、注連縄や紙垂がある場合とない場合がある。本殿には通常注連縄があることが多く、そこから先は立ち入ることができない。>

 

(9)何故、狛犬がいないのか。

<※狛犬はもともと、宮殿の装飾品が神社にも用いられるようになったものだと考えられている。>

 

(10)何故、賽銭箱がないのか。

<※賽銭が用いられるようになったのは、当然ながら貨幣経済がある程度浸透した時期。それまではお米を供えていた。祭りなどでは他のものも供えられている。最初に賽銭箱が置かれたという記録は、天文年間の鶴岡八幡宮のものという。>

 

(11)何故、本殿正面に鈴がないのか。

<※鈴のない神社ももちろんあるが、それなりの規模の神社の場合、ほぼ鈴が備えられている。鈴を鳴らすのは、祭神への合図ではないかと思われる。>

 

(12)何故、本殿正面に蕃塀が建てられているのか。

<※蕃塀、というのは全国的なものではないらしい。元々は、本殿等を直接見ることが恐れ多いために建てられている衝立ではないか、と考えられている。ということは、参拝するのであれば、蕃塀の外からでなければならないはずだが、今の神社はほぼ蕃塀を避けて本殿あるいは拝殿前まで行けてしまう。>

 

(13)何故、興玉(おきたま)神をそれほどまでに祀るのか。興玉神は、二見浦に祀られている猿田彦命のことである。

<※「二見興玉神社「二見興玉神社」 - べにーのGinger Booker Club)の御祭神は「サルタヒコ」。内宮の「御垣内平面図(http://www.isejingu.or.jp/naiku_1.html)を見ると、西北(左上)の隅に、建物はあるが名前が書かれていない。ここが「興玉社」。「1年間の主な祭り(http://www.isejingu.or.jp/event_1.html)」にもしっかり「興玉神祭」が書かれており、行なわれるのは「神嘗祭」と「月次祭」という神宮でも重要な祭りの前、である。>

 

(14)何故、倭姫巡幸で、二十四カ所も転々としたのか。その資金は一体どこから捻出されたのか。

<※「倭姫宮倭姫宮 - べにーのGinger Booker Club)」参照。どうやら、十五カ所ではなく、二十四カ所だったらしい。盛ったのか、事実なのか。>

 

(15)何故、当時はあれほど住みづらかった伊勢の地に落ち着いたのか。

 

(16)何故、五百年も経ってから豊受大神が呼ばれたのか。

 

(17)何故、二十年に一度、遷宮を行うのか。

 

(18)何故、伊勢参りにあれほど多くの人々が熱狂したのか。

<※「◯◯詣で」や「◯◯参り」のブームはいくつかある。「蟻の熊野詣で」と呼ばれた熊野三山への巡礼が有名か。>

 

(19)何故、伊勢白粉が梅毒に効くといわれるようになったのか。

 

(20)天照大神は、本当に女神だったのか。

 

(21)天照大神は、蛇だったのか。

 

(22)天照大神は、『かはく』『河童』だったのか。

 

(23)天照大神は、天岩戸で殺害されたのか。

 

(24)天照大神は、本当に天皇家の祖神だったのか。

 

(25)天照大神は、何者なのか。

 

(26)天照大神は、卑弥呼だったのか。

 

(27)天照大神と、天照国照彦天火明櫛玉饒速日命との関係は。

 

(28)天照大神と、持統天皇の関係は。

<※記紀神話の原型を整えたのは天武天皇持統天皇と言われている。その記紀神話の中で、何故、天照大神は御子神でなく孫神を地上に降ろし皇祖としたのか、という疑問がある。これは、持統天皇が、自らの孫である皇子(後の文武天皇)を皇位につけるために持ち出したものではないか、という説がある。つまり、「天照大神は、自らの孫を地上の支配者として降ろした。それと同様に、女帝である自分も、孫の皇子に皇位を譲る。これは、神意にかなう」という論法で、孫への皇位継承を正当化した、というものである。>

 

(29)天照大神は、本当に伊勢に祀られているのか。

 

(30)そもそも『神宮』とは何か。

 

え〜……妄想の準備をしていただけで時間が過ぎてしまいました。

<※>の追記がない項目については、今の私の知識では何ともならず、本編のネタバレにしかならないので、書いていません。

本番はまた次の機会に〜。

 

 

伊勢神宮と天皇の謎 (文春新書)

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