10/20。
目黒までやってきて、「目黒不動」に参拝。
実は目的地は他にあったのでした。
「五百羅漢寺」。
◯こちら===>>>
この日は「らかんさん」のお祭りで、出し物やら何やらいろいろ行なわれていたので、参拝できないのかなと、一度スルーしたのでした。
……写真としては、この一枚です。
「五百羅漢寺」、非常に近代的な建物に生まれ変わっておりまして。
昭和56年に、鉄筋コンクリート造の堂塔が落成。
写真の階段を上って、右手に曲ると「羅漢堂」があります。
そちらに、多くの羅漢像がずらりと並べられています。
近代的な建物の中に、黒々とした羅漢像が安置されていると、何とも不思議な気分になりました。
多くの像では、恐らく貼られていたであろう金箔ははげてしまって、下地の漆塗りがむき出しなのですが、現代人にはその古色蒼然とした風合いが「侘び寂び」に通じる何かを感得させるらしく、同じくモノトーンのコンクリート造の建物と不思議な調和をしているように思えたものです。
ときどき、「出張中」の羅漢さんもいらっしゃいました。
「羅漢堂」を抜けますと「本堂(大雄殿)」があり、本尊「釈迦如来」他菩薩、羅漢像が安置されています。
立体的に置かれた羅漢像が、それほど広くない堂内に異空間を生じせしめている、という様子でした。
写真がないのでこんなところですが……。
「聖宝殿」から回廊を巡ると、様々な寺宝を拝観することができます。
さて。
ほとんど予備知識のないまま訪れた「五百羅漢寺」、目的は何だったのか、といいますと。
このお守りの図柄になっています、
「獏王」像
でございます。
『足洗邸の住人たち。』で見かけて以来、是非とも実物を見ておきたい、と思いましたもので。
「羅漢堂」の出口辺りに安置されておりました。
高さ60センチくらいでしょうか、思っていたよりも大きな像で驚きました。
「獏」といえば、悪い夢を食べてしまって、いい夢を与えてくれる、中国産の霊獣のことです。
「獏王」の像は、「背中に角(翼?)があって、髭を生やした人面の獣で、前脚は蹄(奇蹄目?)、額に目のある三つ目で、左右の腹にも三つ目のある姿」です。
体は牛、尻尾は虎、のようです(一説には、様々な霊獣を作ったときの余り物で作られたのではないか、と言われているとかいないとか/体が牛、といいますと「件(くだん)」という妖怪のことが浮かびますが、こちらは未来を予言する妖怪です)。
江戸時代の『嬉遊笑覧』という書物には、「白沢は獏なり」と書かれているそうです。
「白沢」というのは、これまた中国産の霊獣で、とにかく物知りです。
さくっとWikipediaを調べていただければわかりますが、古代中国の「黄帝」が出会った「白沢」は、一万種類以上の妖異怪神のことを伝えて、「黄帝」がそれを書き取らせたそうです。
これを「白澤図」と呼びまして、実物は逸して伝わっていないようですが、「こんなものにあったらこうしなさい」という妖怪図鑑みたいなものだったようです。
知識で以て辟邪を為す「白沢」、古い図像では、獅子のような姿だったそうです。
これにひとひねり加えたらしいのが、江戸の妖怪キャラクターメーカー・鳥山石燕先生。
『今昔百鬼拾遺』に納められた「白沢」は、角と髭を持ち、額にも目があるばかりか、体の左右にも三つ目がある、何とも奇妙な姿になっています。
で、Wikipediaによりますと、「こうした『白沢』を描いたのは石燕が最初だ」とのことです。
が。
「獏王」をはじめ、羅漢像等を彫りに彫った、「五百羅漢寺」開基の松雲禅師が亡くなったのが1710年。
石燕先生の『今昔百鬼拾遺』が世に出たのは、1780年(らしいです)。
とすると、石燕先生が「白沢」を書く以前から、「獏王」は「白沢」のような姿をしていたわけで。
『嬉遊笑覧』という書物が1830年成立のようなので、「白沢は獏なり」という説がいつの頃から語られていたのかがよくわかりませんが。
少なくとも、石燕先生は「獏王」を見ていたのではないか、と思います。
何しろ1725年に「大雄殿」が落成、その須弥壇の背後に「獏王」が置かれていたといいますし、後々には江戸の名所になっていきますので。
石燕先生は、そこで見た「獏王」の姿から、「白沢」のインスピレーションを受けたのではないでしょうか。
ま、証拠は何一つありませんけども。
ほとんど「獏王」を見るためだけに出向いた「五百羅漢寺」でしたが、実はかつて「さざい堂」があったことを知り、慌てて寺で販売されていた『甦える羅漢たち』という本を買いました。
まだしっかり読んでいませんが……いずれ読んだら感想などを。
「らかんさんまつり」のおかげか、拝観料がサービスでした。
仏縁。
さて、目黒、実はかなり素敵スポットのようなのです。
「目黒不動」から目黒駅へ戻る途中には、
「蛸薬師」があったり(京都にもありますね)。
看板、見えますかね。
「ありがたや 福をすいよせる たこ薬師」と書かれているのですが。
吸い寄せているのが、「開運」の他は、銭ばっかです。
現世利益も甚だしい。
「山の手七福神」に、「大鳥神社」……雨さえ降ってなきゃ、喜び勇んで回ったのになぁ……。
「大聖院」というお寺の敷地内には、「切支丹燈籠」があったりもします。
キリシタンについても勉強したいですねぇ……本当、俺、何で西洋史学科に行ったんだろうか……。
何とか目黒駅にたどり着いたときには、足の小指の皮がずるむけで、まぁひどいことになっておりました、とさ。
足洗邸の住人たち。 12巻 【初回限定版】 (ガムコミックス)
- 作者: みなぎ得一
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2012/01/25
- メディア: コミック
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (9件) を見る