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宿題が終わらない……人生の宿題が……という重い思いをはねのけて、行ってまいりました。
「多度大社」。
◯こちら参照===>>>多度大社
かなり大規模な神社でありながら、一の宮ではないのですね。
しかし、『延喜式』に見られる名神大社だった(らしい)ので、社格としてはかなり上だったと思われます。
何はともあれ、「多度大社」といえば「上げ馬神事」です。
この坂を、うら若き少年が馬に乗って駆け上る、というあれです。
東海地方であれば、毎年ニュースになるので、ご存知の方も多いでしょう。
「お祭り」が流行っているところは、金を持っています(悪いことではないですよ)。
町にはあんまり金がなさそうですが……。
「多度祭
(前略)
上げ馬神事、やぶさめ神事は、多度祭の花形であり、その起源は南北朝の頃に始り、武家豪族ならびに、氏子達が古式のまま神様に奉納する行事として行なっていたが、織田信長の兵火にかかり、約三十年余の間中断している。徳川家の時代となって、本多忠勝公が、桑名城主となり神社の再興をなし、三基の神輿を奉納し、第二代城主、本多忠政公により祭事が復興され、多額の費用を出して多度祭を復活し、更に御厨(神饌を供える地区)組織による広大な祭事となって今日に至っております(後略)」
この地方は、大抵織田信長に何かやられてますよねぇ……。
パノラマってみました。
摂社の「新宮社」。
御祭神の幸魂がお祀りされています。
こうしてみると、結構な坂ですね。
末社「藤波社」。
御祭神が「タケハヤスサノオノミコト」、「オオナムジノミコト」、「スクナヒコナノミコト」となっています。
藤波は、地名でしょうかね。
出雲系は全部ひっくるめて祀ってしまえ、的な勢いを感じます。
お馬さんがおられました。
エサを上げることができます。
「えさ箱」を、ひたすら口で探っておられたので、お一つ差し上げることにしました。
父:ヘクタープロテクター。
母:ダムグリス。
……。
ごめん、知らない。
……。
「白馬伝説」について書かれています。
神使が白馬、ということなんでしょうか。
「神馬」を境内に飼っていた神社は多いと思うのですが、あれってどのくらい昔からのものなんでしょうか。
神事にかかせないったって、流鏑馬なんかは鎌倉以後でしょうし。
平安時代からいたんでしょうかね。
うーん……勉強不足。
末社「雨宮八幡社」。
御祭神は、もちろん「ホムダワケノミコト(応神天皇)」と、「天之水分神(あめのみくまりのかみ)」「国之水分神(くにのみくまりのかみ)」。
「速秋津日子神(はやあきつひこのかみ)」と「速秋津比売神(はやあきつひめのかみ)」の間に生まれた、おそらくは「分水嶺」を象徴した神です。
空から降ってきた雨を分けるのが「天之水分神」、地から湧いた水(川)を分けるのが「国之水分神」、ということでしょうか。
元々祀られていたところが、そういった場所だったのか。
それとも他の理由があるのか……。
立派な神楽殿です。
建物なんかより。岩や木の造形がなかなか素敵で、飽きないです。
なーんか掘ってあるんですよね。
……どうやら、石を寄進した、という記念らしいです(怪)。
こっちは絵も彫られているんですが、まったくわかりません。
古文書、勉強しとくんだったなぁ……。
「筆塚」。
見づらいですが「切支丹燈籠」と書かれています。
接近してみましたが、何故なのかわかりませんでした……。
伊勢の国に、隠れ切支丹がいなかったわけではないでしょうが……いたんですかね。
混むんでしょうねぇきっと。
「左側通行」。
そもそも、真ん中は神様の通り道ですから、自然と空けてほしいですけれどね。
「上げ馬を あげしどよめき 多度祭」
二十世紀まで生きていた。右城暮石、という俳人の句、のようです。
素朴かつ写実的、とかなんとか書いとけばいいですか?
変わった灯籠かな、と思って撮りました。
結構先は長い……どうやら、お伊勢さんから回ってこられた方々がお参りされていたようです。
「宮人よ 我名を散らせ 落葉川」
……さすが芭蕉、と俳才のない私も唸るしかない出来ですね、と書いておけばいいですか?
いや、本当に、俳句というのは短いだけに、行間と余白と余韻の文学なんだと思うのですが、これなんか風景が浮かびますもの。
さすが俳聖。
御手洗所です。
本当は、流水で穢れを洗い流すのが、正しい潔斎です。
階段だらけの参道の横に、ショートカットコースが。
これぞ、金を持っている証ですね(そして、ますます参拝客が増える、という)。
はい、再び「白馬伝説」。
お人形さんの「神馬殿」。
昔は、こちらにいらっしゃったのでしょうかね。
末社「皇子社」。
普通、「八王子社」と書かれているところには、「天照大神」と「須佐之男命」が天の安河で誓約をしたときに生まれた五男三女神が祀られています。
こちらにはそのうち六柱、「正勝吾勝勝速日天忍穂耳命(まさかあかつかちはやびあめのおしほみみのみこと)」、「天之菩卑能命(あめのほひのみこと)」「活津日子根命(いくつひこねのみこと)」、「熊野久須毘命(くまのくすびのみこと)」、「多紀理毘売命(たぎりひめのみこと)」、「多岐津比売命(たぎつひめのみこと)」、がお祀りされています。
「皇子」とあえて書くところが独特でしょうか。
「八王子社」は他にも、「牛頭天王」の御子神を祀っている場合もあります。
元々は仏教の神をそう呼ぶのだそうです。
ただ、どうやら成仏されているようなので、「神」と称するのはいかがなものかと思いますが。
「招魂社」。
摂社「美御前社(うつくしごぜんのやしろ)」。
こちらは「市杵島媛命(いちきしまひめのみこと)」をお祀りしています。
これは、先ほどの五男三女の一柱なんですね。
宗像三女神の一柱。
「厳島神社」の鮮やかな様式から、独立してお祀りされるようになったのか。
元々、特別な神威をお持ちだったから、あのように信仰されたのか。
いずれにしろ、こちらが「安芸の宮島・厳島神社」の影響を受けていることは、多分間違いないでしょう。
立派な門です。
「多度両宮」と額にはあります。
新しいのかな。
本宮にお祀りさレテいるのが、「天津彦根命(あまつひこねのみこと)」。
先ほど出てきた、五男三女の、最後の一柱、です。
「天照大神第三の御子で神代の昔から御鎮座になり雄略天皇の御代に神殿が創建された。
北伊勢地方の文化の発達、産業の興隆に力を尽くされ、御子孫も広くこの地方に御繁栄になって、その総氏神として五穀の豊穣、漁獲の豊撰に厚い御守護を加え給い、殊に雨乞の神として遠近に信仰する人が多い(後略)」
とのこと。
一方。別宮は「一目連神社」、御祭神は「天目一箇命(あめのまひとつのみこと)」。
「多度神社の御子神で御父天津彦根命を扶けて北伊勢地方を開拓せられ、又、我が国、金属工業の祖神でもあり天変地異ある毎に現に御霊を現して諸難を救い給い、時に応じて龍神となりて天翔り旱天に慈雨を恵み給うと云う信仰もあって古来神殿には御扉を設けない」
では、とその前に「神明社」。
「天照大御神」をお祀りしています。
こちらが本宮。
こちらが別宮。
山の中腹に並んでおります。
同時にカメラに収められませんでしたが……。
こういった造りは珍しいので、なかなか壮観でございました。
有り難や有り難や。
さて、「アマツヒコネノミコト」という神ですが、記紀神話においてあまり活躍されておりません。
いろいろな氏族の祖だと書かれています(常陸国から大和国まで、広範囲です)。
活躍していない割に、これだけの氏族の祖とされているのには、何か理由があるのでしょう。
一方で、「アメノマヒトツノカミ」です。
「日本書紀」によれば、天岩戸神話の際に、様々な物を作った「作金者(かねだくみ)」とされています(「古事記」だと、また別の神の名前が書かれていますが、この差異はなんでしょうね)。
要するに、「鍛冶」の神だったということです。
『古語拾遺』によれば、筑紫・伊勢の忌部氏の祖先とされているそうですので、テクノクラート忌部系の神でもあったのでしょう。
ひょっとすると、元々はこの神を信仰する鍛冶集団が伊勢におり、それを取り込んだ天孫族が、自分たちのパンテオンに加えるために、「アマツヒコネノミコト」と結びつけたのではないでしょうか。
大体「天津日子根」って名前、「天神の子ども」とかその程度の意味でしかないですから、どんな神性なのかわかりゃしません。
便宜上作られた神、という気がしてきます。
さてさて、「一目連神社」です。
片目というのは、どうやら洋の東西を問わず、「鍛冶神」の属性のようです。
ギリシア神話のサイクロプスがいい例ですね(他の例を思いつかないので、傍証としては弱いのですが)。
日本の妖怪で、「イッポンダタラ」というのがいまして、片足で片目、なんですね。
民俗学っぽく言うと、「長い間ふいご(たたら)を踏んでいたため、片足が衰え」、「長い間、焼けた金属を見てきたので、片目が衰えた」姿、と考えられています。
この「イッポンダタラ」の一番古い状態が、「アメノマヒトツノカミ」ではないか、ということですね。
さらに、神社の伝承によれば、どうやら暴風神の要素も備えているようです。
とすると、「一つの目」というのは、台風を現しているのではないか、とも考えられるわけです。
こうした複合性を持つ「アメノマヒトツノカミ」に比べて、何の神様だかわかりゃしない「アマツヒコネノミコト」と合わせて壮大に祀っているところをみると……多分、ひどい目にあってますね、「アマツヒコネノミコト」。
しかし、何しろ文献資料もありませんから、正体には迫れません……。
というわけで、妄想し放題ですぜ!!
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